伝の心とオペナビ

 技術の発展は、障害のある方にも影響を与えます。
 ITの利用で、重度身体障害、コミュニケーション障害の方とのコミュニケーションにも新たな道が開けています。
 PC操作や環境制御、意思伝達とその機能も多岐にわたりますが、特にコミュニケーションの部分を焦点に「伝の心」と「オペレートナビ」という、2つの商品の使用感を紹介したいと思います。

 ただし下記の条件での感想(主観)であり、全ての機能、使い方をマスターしているわけではないことをご了解ください。使いこなせば、どちらも便利かつ多くの可能性を示せるものと思います。
<状況>
・ALSや四肢麻痺の患者様の専門病院に勤めているではないので、これらの使用暦も数える程度しかありません。特に、オペレートナビは最近知ったばかりです。
・(デモ〜導入)までの、患者様と機器の出会いの最初の部分に視点を置いています。よって最低限の意思伝達、基本機能で使うことを意図しています。
・それぞれの機器を使いこなしている方たちのサイトが、多数あります。可能性については、そちらを参照してください。

 内容に不適切な点、違う使い方などあればご指摘いただければと思います。



1.商品概要
伝の心、PC     それぞれのHPアドレスを示します。体験版のダウンロードも可能(日数制限あり)。
        ・伝の心      →日立製作所
      ・オペレートナビ  →NEC

    どちらも、PC(Windows)上で動かします。
   最低限必要なものは、PCと操作するためのスイッチです。


2.伝の心
     伝の心:会話  伝の心:日常会話
 左の画面は、通常の会話で使用する画面です。
 50音表の行上を青いカーソルが1行ずつ、順番に動いていく(あ→か→さ)ので、入力したい文字のある行の上でスイッチを押します。すると、今度は行ごとに動く(あ→い→う)ので目的とする文字でスイッチを押して確定です。これを続け、目的とする文の作成、読み上げを行ないます。
 また入力に当たっては、携帯電話などに見られる変換の予測機能なども備えています(いつ→いつも、お邪魔になります)。
 右の画面では、日常よく使われる文をあらかじめ登録しておいて、その範囲での選択を行ないます。
 これがコミュニケーションの主な機能で、その他環境制御装置、メールやインターネットの使用も可能です。

3.オペレートナビ
オペナビ:立ち上げ オペレートナビを立ち上げた画面です。
 基本的にはパソコン入力支援ソフトなので(昔のキネックス見たいな物?)、ワードやエクセルなど、登録してあるソフトの何を立ち上げるか、選ぶことから始まります。

オペナビ:ワード1  オペナビ:ワード2
 ワードパッドを立ち上げました。会話は基本的に、ここで行ないます(つまり、ワープロ+読み上げソフト)。
 キーボード(50音表)はオリジナルが左で50音表が横書きにされてます。右のキーボードは、ネットからダウンロードしたもので、「伝の心」と同じスタイルにしてみました。このように、キーボードの形やレイアウトをいじることができるのが、特徴です。
 黄色いカーソルの動きは1行ずつではなく、最初に4行ずつ移動、目的の行が含まれるところでスイッチを押せば、その4行の中で1行ずつ動く。その後、目的の行内で1列ずつ動いて目的の文字に至ります。
 ちなみにエクセルやメールソフトを立ち上げた時には、それぞれに見合うキーボードが画面上に出てきます。

4.比較
 体験版やデモを使ってみての印象です。上にも書いたとおり、最終的にはどちらの商品も会話支援だけでなく、環境制御や普通のPCの操作を行なうことができます。
 しかし、「伝の心・・・コミュニケーションに特化。オペレートナビ・・・PCを使うことに特化。」という、それぞれの特徴があるために入り方がずいぶん違います。

 伝の心の場合は、操作画面や動かし方が確立されており、機能もコミュニケーション、文書、メール、インターネットという形である程度完結しているために、50音表以外のボタンも少なく、導入のしやすさを感じます。

 一方、オペレートナビの方は、PCのキーボードを画面にそのまま持ってきているために、画面上のボタンが多くなります。そのために、画面が少しごちゃごちゃしている印象もあります。もちろんキーボードのレイアウトを変えられるので、使いやすい・見やすい形への加工はできますが、そのためにはPCの知識や興味が本人、または周囲に多少求められます。
 ただ、オペレートナビの操作にある程度なれた場合には、Windows上で動くソフトの多くが使えるようなので、本人の活動範囲は広がる可能性が高いと思いました。実際にHPなどを作成して自作のキーボードを公開したり、メーリングリストでの情報交換などがなされているようです。

 乱暴な言い方をしてしまえば、家電品のようにすぐに使える操作の手軽さが伝の心にはあり、導入に当たっての敷居は高いが、使いこなせば強い武器になる深さがオペレートナビにあるのではないでしょうか?
 「PCがまったく分からない、とりあえず会話を最優先したい」と言うのなら、伝の心の方が簡単だし、「PCが少しは分かる、勉強しようと思う。会話に限らず、色んなことをしてみたい」というのなら、オペレートナビを勧めたいと思いました。

 もう一つ大きな違いとして価格の問題があります。伝の心はPCとソフト、プリンターがついて45万円弱(ソフトの単体売りはしていません)。オペレートナビは6万円強(ソフトのみ)。それ以外にそれぞれ、スイッチや設定費などがかかります。
 助成を受けられる環境ならば、価格の差は問題にはならないかもしれませんが、施設での購入や、助成を受けられない方の場合には、選択の1つの条件になるかも知れません。


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