敵を料りて勝ちを制し、険阨遠近を計るは、上将の道なり
(てきをはかりてかちをせいし、けんやくえんきんをはかるは、じょうしょうのみちなり)
 敵の動きを察知し、地形の様子にあわせて作戦を立てることは将軍の責務である、ということ。

 地形篇はこういう地形の時にはこういう場所に陣を敷け、というような話が続きます。
 それらを踏まえ、その土地の様子と敵の動きを見ながら策を練らなければならないことを言っています。
 地形という変わらない条件と敵の動きという流動的な条件、それらをともに考慮に入れるということは、情報の把握と整理の重要性があると重います。

 何か物事を進めようというときに、誰でも過去の経験や作られたマニュアルに頼りがちだと思います。
 それは過去のデータに基づいた基本と言う点で、孫子に述べられた地形と陣の敷き方に通じると思います。
 一方、それらはある条件下における成功例(もしくは失敗例)であり、眼前の物事と完全に一致していないという側面もあります。
 基本は基本として踏まえつつも、今起こっている出来事の流動的な部分にも目を向け、適度なアレンジをくわえる柔軟性がリーダーに求められるのではないでしょうか。

 これまで失敗したことがあまり無く、そつなくこなしてきたリーダーにありがちなことがあります。
 「この時には、こうしてうまくいった!」という自信から、どんな場面でもそのやり方を通そうと言う態度です。
 偉くなればなるほど、引けなくもなるようです。
 時には発想を根本から変える努力が必要かもしれません。

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