百戦百勝は善の善たるものにあらず
(ひゃくせんひゃくしょうは、ぜんのぜんなるものにあらず)

 戦争では、敵を痛めつけずに降伏させるのが最善である。実際に戦うのは次善の策であり、百戦百勝であっても最善とはいえない、ということ。

 最初にこれを読んだとき、「兵法書なのに勝利を善としないなんて・・・」と思ったものです。
 戦争とは目的ではなく、政治のための道具・手段の一つなのだから、勝者敗者ともに損害を出す戦争という手段を取らず、いかに目的を達成するかを考える。
 これは孫子全体を貫く根本思想となっています。
 実際の社会でも、余計な軋轢を生む諍いはなるべく避けたいのは言うまでもありません。

 時間がたてばたつほど、批判にさらされているイラク戦争。
 日本からの派遣もあり、見過ごせない問題ではありますが、この戦争はどうだったのでしょう。
 フセイン元大統領の拘束とその後のアメリカ主導の統治という結果を見れば、戦争には勝ったといえます。
 しかし戦争そのものが目的となっていて、より大きな目的を達成するための一手段として戦争を位置付けられなかったところに、現在の混乱があるようにも感じられます。
 これは戦争が「良かった、悪かった」「賛成、反対」という道義的な問題とは別な話です。

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