善く戦うものは、これを勢に求めて人に責めず
(よくたたかうものは、これをせいにもとめて、ひとにもとめず)
 戦上手は個人の能力に過度の期待をかけず、勢いに勝負の行く末を任せる、ということ。

 三国志の英雄や日本の戦国時代の各武将、個人の能力としてはそれぞれ最高と呼べるものであったと思います。しかし彼らが戦で常に勝てるかといえば、そういうものでもありません。
 たとえ百人力であったとしても、万の軍勢の前にはたかが百に過ぎないからです。
 戦全体でみたときには、組織としての能力、勢いをいかに優勢に保つかが大事だということです。

 バブル以降、ワンマン社長によって築き上げられた企業の傾きが目立ちます。
 しかし社長個人の能力に、企業や組織が大きく頼りすぎたことが、傾きの原因だと孫子の言葉を裏返すとなります。
 個人の力ではなく組織としての勢いがなければ、いくら規模の大きな組織であったとしてもうまくいかない、ということなのでしょう。
 職場の部署やサークルなどの話題が出るときに、ある特定の個人の名前しか出てこないような組織はまだまだ、という事かも知れません。
 究極的には、誰の名前も出てこない、組織だけが一人歩きしているような状況が組織としての強さなのかもと思います。

 そう思うと、身近でもっとも大きな組織体である役所・官公庁で、役人の名前を思い出すことはありません。
 善悪は別にして、それがあの強さの秘密かもしれません。

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