進みて禦ぐべからざるはその虚を衝けばなり
(すすみてふせぐべからざるは、そのきょをつけばなり)
 進軍するときに抵抗を受けないのは、相手が思ってもいない所、時、方法を使うからである、ということ。

 前項と内容的にはかぶります。相手が予測しないところを攻める、つまり「虚をつく」ことで作戦は成功するといっています。
 ただこれに続く文の中では、相手と戦いたくないときには策略で目を他にそらしてしまうことだ、と相手の虚に自分を置くことでの防御についても触れています。

 虚をつくことで成立する犯罪、といえば「詐欺」でしょう。
 いまだに後を絶たない「俺俺詐欺」はこちらが想定しないときに、突然身内からのS.O.Sを装って騙す手口。
 後から考えればおかしな点は多々見られるものの、予想外のタイミングで虚をつかれ、勢いに押されて(兵勢篇参照)、完全に相手の言うがままになるようです。
 同じように、宗教詐欺なども。苦しみや悲しみに共感したところから入り、心を許した瞬間にお金がらみの要求を出して、騙し取っているようです。
 苦しみや悲しみに落ちていると、心の中はそのことにのみ囚われ、他のことに対しては虚になっていると思います。また目的は金ではなく救済、と目をそらすことで虚を作り出してもいます。

 詐欺師が被害者から金を引き出す過程とは、まさに「その虚を衝けばなり」です。

「戻る」
inserted by FC2 system