兵の形は実を避けて虚を撃つ
(へいのけいは、じつをさけてきょをうつ)
 戦争を仕掛けるときには、相手の戦力が整い充実しているところではなく、手薄なところを攻めなさい、ということ。

 敵に向かうときには、どうしてもその充実したところに目が向いてしまい、どうすればそこを崩せるかに悩みがちです。
 しかしどんな敵にも手薄な弱点はあり、手薄なところを崩せば、充実したところも続けて崩れることを言っています。

 臨床の現場で。病気になって障害を受けた患者様・・・
 どうしても障害で失ったものの大きさに打ちひしがれています。リハビリなんてしたくない、死ねばよかった、そんなことを言われることもしょっちゅうです。
 私は言語障害担当なので、そういうことすら言えず、ただ泣いてるだけのことも多くあります。

 障害について評価し、治療するのが我々の仕事ではあるのですが、落ち込みの時期にある人にそればかりを強調するのはあまりに酷であり、その後に続く治療を考えると得策とはいえません。
 そのような時には、メインとはいえないところから治療を始めることもあります。
 少しやるだけで、改善の見込めるところ、もしくはそれほど障害を受けていないところが必ずあります。
 そのような軽めの所から始めて少しづつ障害を納得、回復の経験をつむことで自信がついてもっとも大変な障害、治りづらいところにやっと取り掛かれることがあります。

 患者様にとってリハビリをするということは、障害という敵に立ち向かうようなものです。
 その中で乗り越えやすいところから始めることは、敵に勝つための「虚を撃つ」につながります。

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