失語1

失語症とは?

一言で言ってしまえば、「ことば」の使用が障害された状態です。
家族の方やスタッフの方からは、「会話ができない。」「分かっていそうだけど、時々変。」などとよく言われます。
さらにことばの通じなさを重くとらえて「認知症になった。」などと言われる場合もありますが、根本的に違うものです。

ただし失語症はあくまでも総称であり、その障害のされ方によって大きく変わります。
たとえば、「ことばの表出」では「話す・書く」、「ことばの理解」では「聞く・読む」というそれぞれの側面があります。
現実の場面では、4つの側面がどのように障害され、日常生活に影響を与えているかについての十分な評価が必要です。

多くの場合は、周囲のコミュニケーションのとり方を変えることで状況が変わります。
そのあたりをどう体感していただくかを考えました。



共通点を探そう

<手続き>・・・参加者は多いほうが良い。グループワーク。

1:誰かとペアになってお互いの共通点(男である・サッカーが好き、など・・・)を会話で探す。
2:ペアを交代。どちらも発話禁止。共通点をジェスチャーのみで伝えあう。
3:ペアを交代。発話禁止。右手の使用禁止。以上の条件で、伝えあう。

<解説>

手続き1は、普通の会話ですので、特に問題もないと思います。
何個見つけられるでしょうか?
手続きの導入であるとともに、基準となる数値データを得ます。

手続き2では、「ことば」というコミュニケーション・ツールが1つ失われます。
ことばの表出面が障害された失語症の方の状態です。
1より、伝えられる情報量が低下。一つ一つを伝えるのに時間がかかると思います。

手続き3では、失語症の方の多くに見られる右片麻痺を追加します。
ジェスチャーで有効に使っていたであろう、上肢にも制限を加えます。
さらに情報伝達に困難を生じます。

知能は正常、しかし「ことば」のみが障害され、麻痺もある方のコミュニケーションの難しさを体験してもらいます。


新人の介護スタッフへの講習を頼まれた際に、その他の課題とともに行いました(各手続きは2分)。
ペアの数は全部で14組でした。
手続き1では、お互いの遠慮などもあり、各ペアごとの差が大きかったのですが、大体10〜20個はみつけられていました。
手続き2では、多いペアでも10前後。さらに、1分半過ぎてからは、することがなくなって無動になっているペアも見られました。
手続き3では、どのペアにも困った顔が浮かんでいます。成績も1〜2個、まったく見つけられなかったペアも何組かありました。
右片麻痺をもつ失語症者が、いかに厳しい条件の中でコミュニケーションを強いられているかに思いをはせていただけたように思います。


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「高次脳体験:目次」


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