注意

注意障害とは?

すべての認知機能のベースにあると思います。
注意の障害があると、その他の高次脳機能や認知機能の障害は重度化、かつ回復を困難にする印象があります。

注意には4つの側面があるといわれ、次の通りです。(→は障害の具体例)
@持続性(1つの刺激に対して、注意を向け続ける)
   →転がるボールの動きを追視できない。単純動作(棒に輪を通すなど)を続けられない。
A転動性(ある刺激から次の刺激へと注意を移す)
   →(転動性↓):テレビを見ている時になった電話の音に気づけない。
   →(転動性↑):スタッフの動きに気をとられて注意散漫になり、食事に集中できない。
B選択性(多くの刺激から1つの刺激を見つけ出す)
   →合格発表で自分の番号を探せない。
C配分性(複数の刺激に同時に注意を振り向ける)
   →料理中、火に鍋をかけていることを忘れ、野菜を切ることに集中してしまう。
ちなみに、@とAは表裏の関係にあるといえるのかもしれません。

家族やスタッフからの訴えで多いのは、「車椅子のブレーキをかけ忘れる(転動性・配分性)」「食事が途中で止まってしまう(持続性・転動性)」などでしょうか



両手じゃんけん&しりとり

<手続き>

1:「右手はグー→チョキ→パーの順でリズム良く動かしてください。右手がいつも勝つように、左手を出してください(チョキ→パー→グー)。」と、教示する。
2:1ができるようになったら、「左手はグー→チョキ→パーの順でリズム良く動かしてください。左手がいつも負けるように右手を出してください(パー→グー→チョキ)。」と、教示する。
3:2ができるようになったら、両手でじゃんけんをしながら、歌を歌う(もしもしかめよ、など)。
4:3ができるようになったら、両手でじゃんけんをしながら、こちらと交代でしりとり。

<解説>

 手続き1では、2,3巡目で右手に合わせて、左手が同じ形を出すことが多く見られます。
手に麻痺も失行もなければ、右手に注意が偏っている配分の問題と、運動パターンの学習の問題だと思われます。
 手続き2では、行っていることは1とまったく同じです。
しかし言葉かけが左手中心になることで注意が偏り、左手にあわせて右手が同じ形になることがあります。
 手続き3では、歌という形で注意の配分をさらに追加しています。
手を動かせるようになったということで、運動パターンの問題を排除しています。
 手続き4では、さらに相手の言葉とそれに応じて言葉を返すということで、注意を払うべきポイントを2つ追加しています。

手続きが進むにつれて、手続き1をクリアした方でも手が止まったり、歌やしりとりの言葉が崩れます。

注意の障害による、作業遂行能力の障害、またはコミュニケーション障害といっても良いのではないでしょうか?
正直、注意障害のない健常の方が改めて注意の問題に気がつくのには、かなりの条件設定が必要です。
何かに集中している時に話しかけられて気づかなかった経験は誰でもあると思いますが、それを実験的に再現しようとしてみました。

介護スタッフの講習会で行いました。
半分以上は、最初の両手じゃんけんで「私、できない〜」という反応でした。
できるようになった方は、「こんなの考えないでやればいいんだよ!」と言ってました。
その通りだと思います。考えすぎるから、注意の配分が崩れているはずなので。
そう言っている方たちも、歌やしりとりなどのオプションがつくことで、崩れていきました。
やはり、どこかを考えすぎることで問題がでてくるようです。


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