頭部挙上訓練2

 頭部挙上訓練については、別ページにおいて、教科書的な定義と、講習会で習った方法を紹介しています。

 このページではその知識を元に、新たな方法(もしかしたら、既存の方法かもしれませんが・・・)を考えたので、紹介したいと思います。

 ちなみに発見のヒントは、「経管栄養中にもできる、いい方法ないかな〜。」でした。

 本方法について、不明な点やご意見などあればメールにてよろしくお願いいたします。

 
 最初にやり方の紹介です。

(a)頚部屈曲  (b)頚部伸展

 ベッドを、上図のように45度程度にギャッジアップします。
 頭の後ろに枕は入れず、フラットな状態にします。
 図では細かく書いていませんが、この方法を必要とする方の多くは、体幹の保持も困難な方が多いので、クッションや脚部のギャッジアップを適宜入れて、安楽な体勢を作ってください。
 準備はこれで完了です。
 (a)1分間、自分の力で「お腹」または「足」の辺りを見るように促し、頚部が屈曲した状態で保持してもらいます。
 (b)後頭部をベッドにつけるように促し、同じく1分間頚部の伸展を促します。
 これら(a)(b)を1セットとし、10セット程度(約20分)行ないます。
 頭部挙上訓練のページで紹介したような、頚部の胸鎖乳突筋や、舌骨上筋群の筋緊張の改善が認められます。

 先の訓練法に比べたメリットとしては、ベッドをギャッジアップしたままできるので、逆流を考えずにすみ、経管栄養中にも行なうことができます
 また、介助者も必要がないので一人で自主トレ可能、かつShaker法のようにフラットな面での頭部挙上は腹筋がきつくて1分間は困難ですが、この方法では1分程度は余裕です。
 さらにベッド上で行なう前提なので、様々な理由でリハ室に来ることが困難な方へのベッドサイドでの訓練に最適です。

 この方法に関するPTさんからのコメント(概略)です。
 「この方法自体は有効だろう。頚部を支える主たる筋は胸鎖乳突筋で、頚部の後方から前方にかけて走行している。だから、初めから頚部を若干屈曲させておくと、余計な働き(伸展)がかからずに屈曲できる。筋の持久性は、一気に本人のきつい状態で付けるよりは、緩やかに繰り返す方が付きやすい。」とのことです。
 対象によっては、Shaker法よりも有効な方もいるかもしれませんね。

本を持って 実際に導入して分かったことは、自分で持ち上げて10秒もすると、「疲れ」や「飽き」からベッドの方にもたれてしまい、屈曲位が崩れます。
 それを防ぐために、右図のように挙上(屈曲位)中には本や絵を見てもらったり、簡単なドリルなどを下においてやっていただくと良さそうです。
 さらにドリルなどを行なうことで、頭部挙上訓練と認知訓練、2つの側面へのアプローチが同時に可能となり、短い訓練時間を効率的に使うことができます。

 今後の検討事項としては、訓練以降の嚥下評価を行い、実際の嚥下障害の改善に寄与しているかを確認すること、今までの頭部挙上訓練との差の有無の検証になります。
 当HPを見て導入される方がいれば、結果など教えてください。合わせて報告させていただきたいと思います。

 ケースを2例挙げます。
   Case:1   管理者自ら実験
 訓練に導入する前に、どんな感じになるのかを確かめようと、OT室のベッドを昼休みに借りて行ないました。
 暇なので、携帯でメールを打ちながら、姿勢に注意しつつ上記方法で10セットです。
 頭部の挙上(屈曲位)をとっていることは、それ程きつくありません。メールを打ちながらも1分間は問題なく過ぎていきます。
 後頭部をベッドに置く(伸展位)のは楽かと思っていましたが、意外に首が上に引っ張られる感じがしました。
 Shaker法のフラットな面で行なった時よりも、伸展している感じがします(ポジション次第かも?)。
 10セット目が近づくにつれて、何となくだるくなってきました・・・。
 そして、午後。スキーの翌日のような軽い筋肉の張りが残り続けました。
 少なくとも、胸鎖乳突筋への効果はあるようです。

   Case:2   廃用症候群
 脳梗塞後の臥床期間が長い、廃用症候群の方に実施しました。
 車椅子座位は可能ですが、体幹の筋力低下が顕著で姿勢の保持は困難。喉頭挙上の遅延、範囲や力の低下も認められ、現在、経管栄養(腸ろう)にて対応しています。
 喉頭挙上筋群へのアプローチを行なうべく、本方法と今までの頭部挙上訓練を併用しながら実施しました。
 本方法においても5セット目くらいから頚部の筋緊張の亢進が見られ、空嚥下での喉頭挙上のスピードや範囲が改善しました。
 訓練実施時の本人の反応です。「首の後ろが痛い・・・。首を持ち上げるのは、きつくない。」
 効果とコメントから見ると、ターゲットとしている舌骨上筋群や胸鎖乳突筋へのアプローチがなされているといえます。


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「嚥下:目次」


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