失認・無視・注意

視空間の問題とは?

右側や左側、あるいは目の前にあるもの全て。
「見えてるはずなのに見えてない!」という方にお会いすることがあります。

テキストを読んで出てくる答えは・・・?
半盲・無視・失認・視野狭窄・注意・身体失認・・・・・

いろんな可能性があり、「見えてない」「気づいていない」という事実だけで判断するのは危険です。
また眼科などで行う視野検査の結果だけでは、失認などの可能性は排除が出来ず、中枢から来る視野障害の問題に全て答えを出すことは出来ません。

このあたり、定義(立場によって発生機序などの差はある)や評価方法については成書を参照してください。

ここでは、あまり高次脳機能障害に馴染みのない方にこれらの違いを伝える方法について考えてみたいと思います。
馴染みがないと高次脳系の本は読みにくいもの。。。
その入り口として、ちょっとした説明に普段使っています。

問題ある点、思い違いの点などあれば、ご指摘いただければ幸いです。



見本
例えば、上の図の様な印のついた紙を見せるときに、それぞれの障害ではどのように見えてるのでしょう?
我々には、4つの点が見えています。
それぞれの障害を持つ方の見え方は次のようであると思われます。

視野の欠損
脳の視覚ルートの一部に障害を受け、視野の左右半分や1/4が欠損した状態です。
ちなみに視野狭窄は見えるところが全体的に縮小されて、鍵穴からのぞくような世界になると、かつて教わりました。
ここでは、左半盲の例を出しています。
下の図で言うところの、灰色の部分が視野からなくなる(見えない)状態です。

横書き文や数字を見るときに左端を見落とすことが多く、「見えない側を見てください」の声かけや(左を意識的に向く)(左側に目印を置く)などの工夫をしていただくとよいです。

左半盲

左半側空間無視
発生機序については、注意障害説や運動障害説などがあります(この呼び方にも色々あります・・)。
詳細はここで省きますが、要は左側(右側も状況は一緒)の存在を認めません。

下の図の灰色部分は、見えているのにまったく無視している場所です。
見ているけれども、意識に上らない状態ともいえるのでしょうか。。。

イメージ的には、車の運転を思い出してもらいます。
流れる風景は確かに一度は視野に入っているはずですが、そこにあった看板の全てををきちんと見て意識することはありません(そんなに見ていたら、きっと事故ります)。

だから、半盲の方の工夫で見られる「左を見て!」などの声かけも、もともと存在しないものは意識できず、定着しづらいようです。
これら左側の無視が歩行時の視野などでもおこり、また注意障害などとの合併も多く、実生活での困難を増しています。
具体的には、左半側空間無視のページの歩行時のズレなどがあります。
また存在する右側を追いかけていくうちに、右側を向いたままの姿勢になっていることが多いです。

「左側が見えない」という症状だけ取れば、半盲と同じ状態と思われますが、(存在を意識できる・存在を認めない)の差が大きいと思われます。

左無視

左不注意
視野の不注意には注意障害が背景にあります。
その発生機序にも、(左側の注意が低下)(右側の注意が亢進)というそれぞれのケースがあるのではないでしょうか。

見ている範囲は黄色の扇形で示した範囲になります。
「左<右」で注意が寄っていくために、視野としては正常範囲ですが、標的となる見本からは右側にずれています。
この場合も、右側への注意を追いかけた結果、右側を振り向いた姿勢でいることが多いようです。
見え方は無視と不注意では異なりますが、見ているものや姿勢などでの差はほとんどないように思います。

左不注意

失認
見ているものの中の違いが分からない。
地と図を切り離せない。
視覚刺激が見えているが、その意味を理解できない(認知を失う)という状態です。

イメージ的には、隠し絵などで体感することが多いかもしれません。
星座なども一度覚えると、数ある星の中からその星座を構成する星が切り出せますが、それまでは無数の星の中に埋もれています。

同様に失認の方では下の図のように、異なる色であるはずの印がほとんど背景と同一化してしまう(きちんと黄色に見えていても、情報処理の過程で埋没)と考えられます。
そのため皿の中と外が区別できず、皿の外のテーブルをお箸でおかずを探してつついていたりします。

ちなみに図では印の色を何色かで分けていますが、現実にも分かりやすいものと分かりにくいものが混在しているようです。

失認


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